この記事では、あいみょんの大ヒット曲「君はロックを聴かない」を、
「コード」「メロディー」「歌詞」など、様々な方面から徹底的に分析します。
楽曲概要
「君はロックを聴かない」は、あいみょんのメジャー3枚目のシングル表題曲。
ワーナーミュージック・ジャパン内のレーベル「unBORDE」から 2017年8月2日に発売された。
ストリーミングの再生回数は3億回を突破しており、代表曲の「マリーゴールド」(6億回突破)に次ぐ人気曲となっている。
アーティスト:あいみょん
作詞・作曲:あいみょん
アルバム:青春のエキサイトメント
リリース:2017年8月2日
ジャンル:J-POP
【ミュージックビデオ】
歌詞のストーリー
ロック好きの男の子が、好きな女の子との距離を縮めるために、不器用ながらも頑張る姿が描かれています。
「自分が辛いときに励まされてきたロックを、好きな人にも聴かせてあげたい」と、男の子の純粋で真っすぐな恋心をロックを通して表現しているのが印象的です。
また、この曲は一見すると、男の子の「女の子」に対する恋心を歌っているようですが、それ以上に「ロック」に対する情熱を歌っていることが分かります。
「こんな不器用で切ない恋愛も、ロックを聴いて乗り越えてこられた」と、大好きなロックへの感謝の気持ちが、サビで繰り返し歌われていますね。
曲の印象
曲調から受ける印象です。
- 明るい
- 元気のある
- 爽やか
- ストレート
- 青春の切なさ
- 懐かしさのある
「なぜこのような印象になっているのか?」を、音楽理論を用いて紐解いていきます。
曲構成
曲構成
[イントロ]→1番[A]→[A’]→[B]→[サビ]→2番[A’]→[B]→[サビ]→[落ちサビ]→[ラストサビ]→[アウトロ]
J-POP定番の構成です。
BPM(テンポ)
100
ミドルテンポ(90~110BPM)です。
落ち着きすぎず、盛り上げすぎず、心地よく聴けるテンポです。
リズム
16ビートの軽快なリズムです。
キー
キー:G(ソ ラ シ ド レ ミ ファ#)
シャープがついているのが「ファ#」のみで、明るく開放感のあるキーです。
(#や♭が増えていくほど響きは複雑になり、陰を帯びてきます)
明るく爽やかな青春ラブソングにぴったりなキーですね。
コード一覧
ダイアトニックコード(基本となるコード)
曲の中で使われているコードを赤色で示しています。
「Ⅶm(-5)」を除いて、満遍なく使われていることが分かります。
スケール | ソ | ラ | シ | ド | レ | ミ | ファ# |
---|---|---|---|---|---|---|---|
構成音 1度 3度 5度 [7度] | ソ シ レ [ファ#] | ラ ド ミ [ソ] | シ レ ファ# [ラ] | ド ミ ソ [シ] | レ ファ# ラ [ド] | ミ ソ シ [レ] | ファ# ラ ド [ミ] |
コード名 3和音 [4和音] | G [G△7] | Am [Am7] | Bm [Bm7] | C [C△7] | D [D7] | Em [Em7] | F#m(-5) [F#m7(-5)] |
度数 3和音 [4和音] | Ⅰ [Ⅰ△7] | Ⅱm [Ⅱm7] | Ⅲm [Ⅲm7] | Ⅳ [Ⅳ△7] | Ⅴ [Ⅴ7] | Ⅵm [Ⅵm7] | Ⅶm(-5) [Ⅶm7(-5)] |
機能 | T | SD(代理) | T(代理) | SD | D | T(代理) | D(代理) |
ノンダイアトニックコード(イレギュラーなコード)
- B7(Ⅲ7)
-
イントロとアウトロで、「B7(Ⅲ7)→Em(Ⅵm)」の形で使われいます。(キー=Eの「V7→I」の動き)
これは「セカンダリードミナントコード」といい、他のキーのドミナントモーション(V7→Iの動き)を借りて来て、部分的に転調するという手法です。
切なさや込み上げる感情、力強さなどを表現するのが得意なコードです。
- D#dim(Ⅴ#dim)
-
サビで「D(Ⅴ)→D#dim(Ⅴ#dim)→Em(Ⅵm)」の形で使われています。
このように、となり合ったコードの間に挿入することで、半音ずつ上昇する滑らかなベースラインを作ることができます。(「パッシングディミニッシュコード」という使い方です)
いびつな響きを持つコードですが、上手く盛り込むことでおしゃれさを演出できるコードです。
考察
ここからは、曲の各パートごとに考察を行っていきます。
- イントロ
- 1番(Aメロ-Bメロ-サビ)
- 2番(Aメロ-Bメロ-サビ)
- 間奏
- 落ちサビ
- ラストサビ
- アウトロ
- この記事では、楽曲の分析を行うために歌詞を引用しています。歌詞の全文は別の音楽サイトなどをご確認ください。
- コードやメロディーの採譜はなるべく正確に行うようにしていますが、間違っている可能性もございます。予めご了承ください。
イントロ
コード進行
|C D |Bm7 Em |Am7 B7 |Em |
|C D |Bm7 Em |Am7 |D |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 Ⅲ7 |Ⅵm |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 |Ⅴ |
注目ポイント
- ①「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm」進行(王道進行)
-
「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm」進行がベースになっています。
これはJ-POPの王道進行とも呼ばれており、平成のほとんどのヒット曲に使われているといっても過言ではないコード進行です。
イントロからどことなく懐かしい雰囲気が漂っていますよね。
- ② Ⅳ(サブドミナント)始まり
-
Ⅳ(サブドミナント)始まりの曲は、Ⅰ(トニック)始まりの曲に比べて、どことなく不安定で切ない雰囲気があります。
- ③ Ⅲ7(セカンダリードミナントコード)
-
ダイアトニックコードには無いコードで、「Ⅲ7→Ⅵm」の形でよく使われます。
キー=Eのドミナントモーション(B7(V7)→E(I)の動き)を借りて来ているため、一瞬だけ転調したような、異質な響きがします。
感情がぐっと込み上げるような、切ない雰囲気がありますね。
- ④ ツーファイブワン進行
-
7~8小節目の「Ⅱm7→Ⅴ」はツーファイブ進行で、Aメロの頭の「G(Ⅰ)」と結びつくことで「ツーファイブワン進行」となります。
結びつきの強い「強進行(完全4度進行)」が2連続するコード進行で、Aメロに向かって勢いよく進んでいきます。
この曲が持つ、爽快さや元気の良さにつながっていると思います。
- ⑤ コードチェンジのタイミングの変化
-
基本的に2拍ずつのコードチェンジですが、最後の7~8小節目のみ、4拍ずつのコードチェンジになっています。
「ツーファイブワン進行」をより強調し、「イントロが終わってこれからAメロに向かいますよ」と、場面の切り替わりを暗示する効果が生まれています。
1番 Aメロ
コード進行
|G |D |C D |G |
|C D |Bm7 Em |C |D |
|G |D |C D |G |
|C D |Bm7 Em |C D |G |
|Ⅰ |Ⅴ |Ⅳ Ⅴ |Ⅰ |
|Ⅳ Ⅴ|Ⅲm7 Ⅵm |Ⅳ |Ⅴ |
|Ⅰ |Ⅴ |Ⅳ Ⅴ |Ⅰ |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅳ Ⅴ |Ⅰ |
注目ポイント
- ① 始まりと終わりの「Ⅰ(トニック)」
-
安定感があり、明るい印象を与えます。
- ② スリーコード
-
スリーコードといわれる、3つの主要三和音「Ⅰ(トニック)」「Ⅳ(サブドミナント)」「Ⅴ(ドミナント)」を基調としています。とてもシンプルで素直な響きです。
- ③ 「Ⅰ→Ⅴ」と「Ⅴ→Ⅰ」
-
「Ⅰ(トニック)」と「Ⅴ(ドミナント)」は、スリーコードの中でも一番仲のいいコード同士です。
「Ⅰ→Ⅴ」や「Ⅴ→Ⅰ」は非常に力強い進行のため、この曲の元気で明るい雰囲気につながっているのだと思います。
- ④「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm」進行
-
イントロにも登場していた王道進行が使われています。
メロディー
※数字は、スケールの中で何番目の音かを表記したものです。
す こ し さ み し そ う な き み に こ ん な う た を き か せ よ う
ソ ソ ソ ラ ソ ソ ソ シ ラ ソ ファ# ソ ソ ソ ソ ソ ファ# ミ ファ# ミ レ レ
1 1 1 2 1 1 1 3 2 1 7 1 1 1 1 1 7 6 7 6 5 5
て を た た く あ い ず ざ つ な サ プ ラ ー イ ズ ぼ く な り の せ い いっ ぱ い
ド レ ミ ド ド シ ラ ラ シ ド レ ラ ラ シ ラ ソ ソ ソ ド シ ド シ ド シ ソ ラ
4 5 6 4 4 3 2 2 3 4 5 2 2 3 2 1 1 1 4 3 4 3 4 3 1 2
ほ こ り ま み れ ド ー ナ ツ ばんに は あ の ひ の ゆ め が お ど る
ソ ソ ソ ラ ソ ソ ソ シ ラ ラ ソ ファ# ソ ソ ソ ソ ソ ファ# ミ ファ# ミレ レ
1 1 1 2 1 1 1 3 22 1 7 1 1 1 1 1 7 6 7 6 5 5
ま じ め に は り を お と す い き を と め す ぎ た ぜ ー さ あ こ し を お ろ し て よ
ド ド レ ミ ド ド ド シ ラ ラ シ ド レ ラ ラ ラ ラ シ♭ ラ ソ シ ド シ ド シ ド レ ラ ソ ソ
4 4 5 6 4 4 4 3 2 2 3 4 5 2 2 2 2 3♭ 2 1 3 4 3 4 3 4 5 2 1 1
注目ポイント
- ① 細かく刻むメロディー
-
音符の数が多く、細かく刻むようなメロディーです。にぎやかな印象になっています。
- ② 1オクターブの跳躍
-
「~き み に(ソ ファ# ソ)」「こ ん な(ソ ソ ソ )~ 」の、「に(ソ)」→「こ(ソ)」は、1オクターブ上の「ソ」への跳躍です!
非常にダイナミックで、勢いのあるメロディーになっています。
この曲の「元気のよさ」には、メロディーの動きも関係していました。
一方、その他の部分は同音連打と順次進行(となりの音への進行)がほとんどで、平坦なメロディーになっています。
平坦さがあるから、跳躍が活きるのですね。
- ③ 同じ譜割の繰り返し
-
「て を た た く あ い ず」「ざ つ な サ プ ラ ー イ ズ」の部分は、同じようなメロディーで音程だけが下がっていきます。
しかも歌詞に注目すると、「あいず」「サプライズ」と、韻を踏んでいるのが分かります。
耳に残りやすく、思わず口ずさみたくなる美味しいフレーズです。
- ④ ブルーノート(3♭)
-
「シ♭」はブルーノートです。
ブルーノートとは、メジャースケールにおける3度・5度・7度の音が半音下がるもので、哀愁を帯びたメロディラインの音のことです。
この曲はキー=Gのため、「シ♭」は、Gメジャースケール(ソ ラ シ ド レ ミ ファ#)の3度の音を半音下げたものになります。
スケール外のため少し異質な音ですが、ブルースのようなおしゃれなメロディーになっていますね。
歌詞
主人公の男の子が、寂しそうにしている女の子を楽しませようと、ロックを聴かせる場面です。
不器用ながらも、一生懸命な姿に親近感が沸きます。
また、今の時代としては珍しい「ドーナツ盤」というワードが登場します。
この男の子はどうやら、レコード集めが趣味のようですね。
好きな女の子のために久しぶりに取り出した古いレコードには、心躍るような楽曲が入っているのでしょうか。
レコードを再生しようと、息を止めてレコードプレーヤーの針を落とす、とても真剣な様子が目に浮かぶように描かれています。
1番 Bメロ
Aメロの尺が長めだったのに対して、Bメロは短めになっています。
コード進行
|C D |G Em |C |D |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅰ Ⅵm |Ⅳ |Ⅴ |
注目ポイント
- ① Ⅳ(サブドミナント)始まり
-
サブドミナントは、やや不安定な響きのコードです。
トニック始まりで安定感のあったAメロとは対照的で、曲の展開が感じられます。
- ②「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm」進行(王道進行)
-
Bメロでも王道進行が登場します。
3番目の「Ⅲm7(トニックの代理)」が「Ⅰ(トニック)」に置き換えられています。
同じ役割のコードに置き換わっているため、響きに大きな違いはありません。
- ③ V(ドミナント)で終了→サビへ
-
V(ドミナント)はとても不安定な響きのコードで、安定感のある場所に着地したがる性質があります。
Bメロの最後に置かれている「Ⅴ」は、「(安定感のある)サビへの着地」を連想させ、これから来るサビへの期待感を膨らませる役割をしています。
メロディー
フ ツ フ ツ と な り だ す せ い しゅん の お と
ソ ソ ファ# ソ ソ ソ ソ ソ ファ# ミ ファ# ミ レ レ レ ソ
1 1 7 1 1 1 1 1 7 6 7 6 5 5 5 1
か わ い た メ ロ ディー で お ど ろ う よ
シ ド シ ド ミ ミ ミ ミ ラ ラ ラ ソ ラ
3 4 3 4 6 6 6 6 2 2 2 1 2
注目ポイント
- ① 長く伸ばすメロディー
-
Aメロが細かく刻むようなメロディーだったのに対して、Bメロは長く伸ばすようなメロディーが目立ちます。
セクションごとにメロディーのリズムにも変化をつけることで、曲の展開にメリハリが生まれています。
- ② 1オクターブの跳躍
-
1オクターブの跳躍がBメロでも登場します。(「フ ツ フ ツ と な り だ す」/「お ど ろ う よ」)
Aメロとの統一感も生まれていると思います。
- ③ サビに向かって音程が高くなる
-
サビに向かうにつれて、メロディーの音程がだんだん高くなり、曲が盛り上がっていきます。
「~お ど ろ う よ(ラ ラ ラ ソ ラ)」の「お(ラ)」→「ど(ラ)」で1オクターブ上の「ラ」(これまでで一番高い音)に跳躍、そして連打しています。
歌詞
レコードが回りだし、「フツフツ」と古い音を立てながら音楽が流れ始めます。
どんな音楽かはあえて細かく説明されておらず、「青春の音」と表現されています。
聴く人それぞれが、自分の青春時代を彩った音楽を思い浮かべて、懐かしい気持ちに浸ることができますね。
また、「乾いたメロディー」とは、レコードが古すぎて乾いたような音がすることなのか、乾いた風のように軽やかなメロディーのことなのか、潤いの感じられない無機質なメロディーのことなのか….いろいろな推測ができます。
腰かけてレコードをに耳を傾けていた二人ですが、音楽で緊張が解けて踊りだしたくなったのか、男の子は女の子に「踊ろうよ」と呼び掛けています。
1番 サビ
コード進行
|C D |Bm7 Em |C D |D#dim Em |
|C D |G D/F# Em |C |G |C D |G |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅳ Ⅴ |Ⅴ#dim Ⅵm |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅰ Ⅴ/Ⅶ# Ⅵm |Ⅳ |Ⅰ |Ⅳ Ⅴ |Ⅰ |
注目ポイント
- ① Ⅳ(サブドミナント)始まり
-
Ⅳ(サブドミナント)始まりのサビは、やや不安定で切ない雰囲気を帯びています。
- ②「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm」進行(王道進行)
-
「Ⅳ→Ⅴ→Ⅲm7→Ⅵm」進行(王道進行)がベースになっています。1曲を通してこの進行が使われていますね。
- ③ パッシングディミニッシュ(Ⅴ#dim)
-
3~4小節目では、王道進行「C(Ⅳ)→D(Ⅴ)→Bm7(Ⅲm7)→Em(Ⅵm)」が、
「C(Ⅳ)→D(Ⅴ)→D#dim(Ⅴ#dim)→Em(Ⅵm)」にアレンジされています。
「D#dim」は経過的に使われるコードで、「パッシングディミニッシュコード」といいます。
ベース音が1音ずつ上昇する「D」と「Em」の間に、さらに半音「D#」を挟むようにして使われています。
これによってベース音が「レ→レ#→ミ」と半音ずつ上昇し、胸がジンジン響くような効果が生まれています。
青春の恋の甘酸っぱさを表現しているようです。
また、「D#dim(Ⅴ#dim)」は「B7(Ⅲ7)」と構成音がほぼ同じで響きが似ているため、「B7(Ⅲ7)」の代理とも考えらます。
- ④ 分数コード(Ⅴ/Ⅶ#)
-
6小節目の「D/F#」は「分数コード(オンコード)」といい、ベース音のみを他の音に差し替えているコードのことです。
「D」の構成音は「レ・ファ#・ラ」で、本来のベース音は「レ」ですが、これを「ファ#」に置き換えています。
これによって前後のコードのベース音が滑らかにつながり、「ソ→ファ#→ミ」とスムーズに下行するベースラインが作られています。
- ⑤ Ⅴ(ドミナント)→Ⅰ(トニック)で終了
-
Ⅴ(ドミナント)→Ⅰ(トニック)は、非常に解決感の強いコード進行です。
これでサビが締めくくられることで、爽快な印象になっています。
メロディー
き み は ロックなん か き か ないとお も い な が ら
シ ラ ソ ソ ミ ソ ミ ソ ラ ラ レ シ ド シ ラ ソ
3 4 1 1 6 1 6 1 2 2 5 3 4 3 2 1
す こ し で も ぼ く に ち か づ い て ほ し く て
シ ソ ミ ソ ミ ソ ラ ラ シ シ ド シ ド シ ラ ソ ラ
3 1 6 1 6 1 2 2 3 3 4 3 4 3 2 1 2
ロック なんか き か ないとお も う け れ ど も
ソ ミ ソ ミ ソ ラ ラ レ シ ド シ レ ラ ソ
1 6 1 6 1 2 2 5 3 4 3 5 2 1
ぼ く は こんな う た で あ ん な う た ー で こ い を の り こ え て き た
ミ ファ# ソ ソ ソ ファ# ソ ソ ソ ソ ソ ラ シ♭ ラ ソ ド シ ラ ソ ソ ファ# ミ ミ ミ ソ
6 7 1 1 1 7 1 1 1 1 1 2 3♭ 2 1 4 3 2 1 1 7 6 6 6 1
注目ポイント
- ① アウフタクト(オレンジの箇所)
-
小節の1拍目(強拍)以外の拍(弱拍)から始まるメロディーを「アウフタクト(弱起)」といいます。
もっと分かりやすくいうと、伴奏(コード)より先にメロディーが始まることで、勢いがつく感じがします。
「き み は ~(シ ラ ソ)」の部分は、メロディーが一音ずつ下がって、下降するジェットコースターのように勢いがついています。
- ② 躍動感のあるメロディー
-
サビのメロディーは跳躍進行(2つ以上先の音への進行)が多く、元気で弾むような感じになっています。
AメロとBメロは、低めの音で平坦なメロディーが多かったため、サビの躍動感が活きるのだと思います。
- ③ 同じ音の間を行き来
-
「ロックなーんか(ソーミソーミ)」、「すこーしでーも(ソーミソーミ)」の部分では、同じリズムで、「ソ」と「ミ」の間を行き来しています。リズム感も良く、耳に残る中毒性の高いメロディーになっていると思います。
- ④ 最高音(レ)
-
サビの後半で、この曲の最高音(レ)が出てきます。
主人公の感情がピークに達する部分です。
「~ お も う け れ ど も(シ ド シ レ ラ ソ)」で、メロディーは上行する一方、伴奏は「G→D/F#→Em」で、ベース音が「ソ→ファ#→ミ」と下行しています。
このように、メロディーが上行、ベース音が下行というのは「反行」という対位法的な動きといえます。
- ④ ブルーノート(3♭)
-
「シ♭」は、Aメロでも登場していたブルーノートです。(スケールの3度の音を半音下げたもの)
- ⑤ クライマックス
-
「あ ん な う た ー で(ソ ソ ソ ラ シ♭ ラ ソ)」「こ い を の り こ え て き た(ド シ ラ ソ ソ ファ# ミ ミ ミ ソ)」の「で(ソ)」→「こ(ド)」は、4度上への跳躍です。
跳躍で勢いよく高いドに駆け上った後、「こ い を ~(ド シ ラ~ )」と、同じ長さで音を刻みながら、1音ずつ下行します。
大きな円を描くようなダイナミックさがあり、「(辛い)恋を乗り越えてきた」という歌詞の意味にもリンクしているように思います。
- ⑥ コード構成音の1度の音で終了
-
「~ の り こ え て き た(ソ ソ ファ# ミ ミ ミ ソ)」の「た(ソ)」でサビのメロディーが終了します。
この時の伴奏(コード)は「G」で、コード構成音は「ソ(1度)・シ(3度)・レ(5度)」です。
メロディーの「ソ」は、コード構成音の1度(ベースとなる音)に当たるため、非常に安定感があります。
さらに、音を長く伸ばしているため、直球のようなストレートさがあり、とても爽快です。
辛い恋も前向きに乗り越えていく、主人公の真っすぐな心が表現されていると思います。
歌詞
君はロックなんか聴かないと思いながら
=「君は僕と趣味や価値観、ライフスタイルもまるで違う遠い存在なんだろう」という、心の距離感や自信の無さを表現しているのかと思います。
それでも「ロック」はこの男の子にとってアイデンティティのようなもので、いついかなる時もロックに支えられてきました。
そんなロックを「君」にも好きになってもらうことで、「少しでも僕に近づいてほしい(少しでも君との距離感を縮めたい)」と、切実な願いが歌われています。
また、「恋を乗り越えて来た」とは、過去の失恋を乗り越えた経験なのか、現在進行中の恋愛の悩みを乗り越えた経験なのか、様々な解釈ができます。
2番 Aメロ
[A]→[A’]の[A]部分がカットされ、[A’]のみの構成になっています。
歌詞
僕の心臓のBPMは190になったぞ
好きな人の前で高鳴る鼓動を、音楽のテンポ(BPM)に例えている独特なフレーズです。
男の子のマニアックさも出ていると思います。
君は気づくのかい?
なぜ今笑うんだい?
1番と同じく、韻を踏んでいます。
好きな気持ちを隠しきれず顔にも出てしまっているのか、女の子もそれに気づいてくすくす笑っているようです。
男の子は自分の気持ちがばれてしまわないかと、目が泳いでしまいます。
2番 Bメロ
歌詞
「青春の音」は、1番の歌詞と統一されています。キーフレーズですね。
流れ続ける音楽に少し飽きてきたようですが、それでも「メロディーは止まない」=「情熱は止まない」と表現しているようです。
2番 サビ
歌詞
1番の
「少しでも僕に近づいてほしくて」が、
2番では、
「あと少し僕に近づいてほしくて」に変化しています。
歌が進むにつれて、二人の距離が少しずつ近づいているのが分かります。
間奏
コード進行
|C D |Bm7 Em |C D |Bm7 Em |
|C D |Bm7 Em |Am7 |D |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm ||Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 |Ⅴ |
王道進行の繰り返しです。
落ちサビ
メロディー
(省略)
ま た む ね が い た いん だ ー ー
ド シ ラ ソ ド シ ソ ラ ラ シ ド
4 3 2 1 4 3 1 2 2 3 4
溢れてしまう気持ちを、1音ずつ上行するメロディーで表現しています。(赤色の部分)
歌詞
君がロックなんか聴かないこと知ってるけど
「~思いながら」が「~知ってるけど」に変化し、これまで推測だったのが断定に変わっています。
時間が経つにつれて、お互いのことを知っていったのでしょうか。
最初は、「君はロック(僕)に興味がないかもしれないけど、好きになってくれたら嬉しい」といった淡い期待があったのに対して、終盤に向かうにつれて「君はやっぱりロック(僕)を好きにはならないだろう」という諦めの気持ちが出てきたようにも見えます。
それでもなお、「恋人のように寄り添ってほしい」と、諦めきれない気持ちを吐露しています。
ラストサビ
メロディー
き み は ロックなん か き か ないとお も い な が ら
シ ラ ソ ソ ミ ソ ミ ソ ラ ラ レ シ ド シ ラ ソ
3 4 1 1 6 1 6 1 2 2 5 3 4 3 2 1
す こ し で も ぼ く に ち か づ い て ほ し く て
シ ソ ミ ソ ミ ソ ラ ラ シ シ ド シ ド レ シ♭ ラ ソ
3 1 6 1 6 1 2 2 3 3 4 3 4 5 3♭ 2 1
ロック なんか き か ないとお も う け れ ど も
ソ ミ ソ ミ ソ ラ ラ レ シ ド シ レ ラ ソ
1 6 1 6 1 2 2 5 3 4 3 5 2 1
ぼ く は こんな う た で (★)あ ん な う た で ー こ い を の り こ え て き た
ミ ファ# ソ ソ ソ ファ# ソ ソ (★)シ シ シ シ シ ラ ソ ド シ ラ ソ ソ ファ# ミ ミ ミ ソ
6 7 1 1 1 7 1 1 (★)3 3 3 3 3 2 1 4 3 2 1 1 7 6 6 6 1
こ い を の り こ え て き た ー ー
ド シ ラ ソ ソ ファ# ミ ミ ミ ソ ラ ソ
4 3 2 1 1 7 6 6 6 1 2 1
注目ポイント
- ① メロディーの変化(水色マーカーの箇所)
-
1番、2番のサビとは少し違うメロディーに変化しています。高音が増えて盛り上がりが絶頂に達しています。
- ② 休符の変化(★)
-
「あ ん な う た で ー」の手前で、1番、2番までは「8分休符1つ分」の休みだったのに対して、ラストサビでは「8分休符2つ分(1拍分)」の休みに変化しています。
【1番~2番サビ】
ぼ く は こん な う た で (ウン)あ ん な う た で ー
【ラストサビ】
ぼ く は こん な う た で (ウン・ウン)あ ん な う た で ー
音符を変えるだけでなく、休符を変えることでもメロディーに変化を付けることができるのですね。
アウトロ
コード進行
|C D |Bm7 Em |Am7 B7 |Em |
|C D |Bm7 Em |Am7 |D |C△7 |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 Ⅲ7 |Ⅵm |
|Ⅳ Ⅴ |Ⅲm7 Ⅵm |Ⅱm7 |Ⅴ |Ⅳ△7 |
基本的にイントロと同じコード進行ですが、最後のコードに注目です。
注目ポイント
- ① 「Ⅳ△7」で終了
-
Ⅳ△7(サブドミナント)で曲が終わります。
一般的に、音楽は「Ⅰ」または「Ⅵm」で終わることが多いですが、「Ⅳ」で終わることもあります。
- ・「Ⅰ」で終わる曲
-
明るい印象。解決感が強く、「終わった感」が強い。(ハッピーエンド)
- ・「Ⅵm」で終わる曲
-
暗い印象。曲調によってはクールな印象を与えることもできる。
- ・「Ⅳ」で終わる曲
-
明るくも暗くもないどっちつかずな印象。不安定で「終わった感」が強くないため、「儚さや切なさ」、「これから先に何かが続いていく予感」のようなものを感じる。
「Ⅳ」にメジャーセブンス(△7)が加わることでおしゃれな響きになり、切ない雰囲気が倍増しています。「青春の儚さ」や「ロックへの情熱はこれから先も続いていく」といったニュアンスを感じます。
【最後に】まとめ
- 一般的なJ-POPの構成に則っており、親しみやすさがある。
- J-POPの王道進行と呼ばれるコード進行がベースになっていて、どこかで聴いたことのあるような懐かしい雰囲気がある。
- 「Ⅴ→Ⅰ」などの解決感の強いコード進行や、跳躍の多いメロディー、軽快なリズム感などによって明るく元気な曲調になっている。
- 「Ⅳ(サブドミナント)」によって青春の儚さや切なさも演出されている。
- 程よくイレギュラーなコードや音を盛り込むことで、シンプルすぎずおしゃれで聴き飽きない工夫がされている。
- 不器用で完璧ではない主人公に親近感が湧く。
- 「息を止めすぎたぜ」「190になったぞ」「止まないぜ」など、男らしい言葉遣いにも関わらず、好きな女性の前では自信なげに戸惑っている様子にギャップを感じる。
- 「ドーナツ盤」といった歌詞のキーワードや、楽器のサウンドによってレトロな雰囲気が漂っている。
- 片思いという誰にでもある普遍的な感情を、「僕の好きなロックを君にも好きになってほしい」という独特な視点で描いており、個性的でありながら多くの人の共感を呼ぶ歌になっている。
この記事では、あいみょんの「君はロックを聴かない」を、作詞と作曲の観点で徹底的に分析しました。
「君はロックを聴かない」のように、明るく爽やで、どことなく切ない雰囲気のある曲を作りたいという人は、この記事で紹介したテクニックをもとに、曲を作ってみてはいかかでしょうか?
ご意見や感想をおしえてください